AI-OCR

AI-OCRとは?

紙の帳票や画像ファイルから文字情報を自動で抽出できる技術として注目されているのがAI-OCRです。従来のOCRは読み取り精度に限界がありましたが、AIの活用によってその弱点を克服し、多様な業務での自動化を可能にしています。ここではまず、OCRの基本とAIによる進化について解説します。

OCRの基本

OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)は、紙に印刷された文字や画像内の文字を認識し、テキストデータへ変換する技術です。たとえば、スキャナーで取り込んだ請求書や申込書をOCRにかけると、文字がデジタル化され、システムに入力し直す手間を省けます。これにより、データ入力の効率化や電子保存の推進が可能になります。

AIによる進化

従来型のOCRは、文字のフォントやレイアウトが整っていれば高精度に認識できますが、手書き文字や複雑な帳票になると精度が低下する課題がありました。ここにAIを組み合わせたのがAI-OCRです。機械学習やディープラーニングを用いることで、手書き文字や非定型のフォーマットでも高精度に認識できるようになりました。

また、AI-OCRは単に文字を読み取るだけでなく、文脈やパターンを理解してデータを正しく抽出できる点が特徴です。たとえば、請求書から「請求日」「取引先名」「金額」といった項目を自動で識別してデータ化することが可能です。これにより、経理・人事・営業など、幅広いバックオフィス業務での効率化が期待できます。

AI-OCRのメリット

バックオフィス業務にAI-OCRを導入することで、単純なデータ入力の効率化にとどまらず、精度や働き方改革にもつながる多様なメリットが得られます。ここでは代表的な効果を3つの観点から紹介します。

業務効率化とコスト削減

請求書や申込書などの紙ベースの情報をAI-OCRでデジタル化すれば、手入力にかかっていた膨大な時間を削減できます。1件あたりの入力時間が大幅に短縮されるため、年間で数百時間規模の効率化も可能です。これにより、社員の工数削減や外注コストの低減が実現します。

精度の向上

従来型OCRでは読み取りが難しかった手書き文字や複雑なレイアウトも、AIによって高精度に認識できます。結果として入力ミスや確認作業の手間が減り、業務全体の品質が向上します。特に経理や総務など、数値や個人情報の正確さが求められる業務でのメリットは大きいといえます。

DX推進への寄与

AI-OCRで紙の情報を電子化することで、システム連携やデータ分析が容易になります。これにより、単なる業務効率化にとどまらず、企業全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも寄与します。将来的には、RPAやAIチャットボットとの連携により、さらなる自動化と高度化が期待できます。

成果を測るKPIの例

AI-OCRを導入した効果を客観的に把握するためには、定量的な指標(KPI)を設定することが不可欠です。業務効率化やコスト削減といった成果を「見える化」することで、経営層への報告や今後の改善施策にも活かせます。

主なKPIの観点

AI-OCRの導入効果を測るうえで、以下のようなKPIが代表的です。

  • 処理時間の短縮率:従来と比べて入力作業がどれだけ早くなったか

  • 入力精度の向上率:読み取りの正確性がどの程度改善されたか

  • コスト削減額:人件費や外注費が具体的にどれだけ減ったか

  • データ活用度:電子化されたデータが他システムや分析にどれだけ利用されているか

KPIの具体例(表形式)

KPI指標 導入前 導入後 効果例
処理時間(1件あたり) 3分 30秒 約80%短縮
入力精度 85% 98% ミス大幅減少
年間人件費 1,000万円 700万円 300万円削減
データ活用度 限定的 他システム連携可能 DX推進に寄与

このようにKPIを数値で示すことで、導入効果が明確になり、投資判断の根拠としても活用できます。

導入を検討する際のポイント

バックオフィスにAI-OCRを導入する際は、効果を最大化するためにいくつかの注意点があります。やみくもにシステムを入れるのではなく、適切な準備と段階的な導入が成功のカギとなります。

適用業務の選定

まずは、請求書処理や申込書入力など「紙やPDFを多く扱う業務」から適用するのが効果的です。処理件数が多く、人手を要している業務を優先することで、短期間で成果を実感しやすくなります。

小規模導入から開始

いきなり全社展開するのではなく、一部部署や限られた業務で試験的に導入し、効果を測定するステップが重要です。PoC(概念実証)で成果を確認しながら、対象範囲を拡大するとリスクを抑えられます。

セキュリティと運用体制

AI-OCRは個人情報や契約情報を扱うケースも多いため、セキュリティ体制の確認は必須です。データの保存先やアクセス権限を明確にし、運用フローを定めることで安全に活用できます。

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